作品仕様
作品解説
災害時の誘導表示をはじめとして、文化や考え方の違いなどからまだ統一されたサイン表示はなされていない。事前学習を必要としないサイン表示方法として“グラデーションサイン”に着目し、人の直感的に対応可能な誘導表示方法について検討することに至った。
また、色彩は有用な情報を迅速に、正確に伝達する際に果たす役割は非常に大きい。
そこで、色彩の持つ影響力がグラデーションサインを通じて、人の方向誘導にどのような影響を与えるかについて調査した。
本研究では色彩とグラデーションサインを組み合わせたデザインが、人の行動誘導に対して大きく影響する色彩グラデーションの傾向を明らかにすることを目的としている。
色彩はPCCSのトーンを用いることとし、その中で色相は心理四原色と呼ばれる[赤・黄・緑・青]を使用する。トーンについては[vビビッド(中明度高彩度)/dkダーク(低明度中彩度)/pペール(高明度低彩度)]の3種類を用いた。サインのデザインは通路誘導灯の上下端にグラデーションを組み合わせる形式とした。
調査については、2021年11月に129名を対象にグーグルフォームを用いて実施した。集計した結果から分析を行い以下のことが明らかとなった。
基本的に人はグラデーションサインの両端の色彩の明度・彩度・色相の差を比較して行動判断を下している。その際、明度差による誘導効果が一番強く、色相・彩度差による誘導効果は明度差の約半分程度である(彩度差<色相差<明度差)。しかし、明度差と彩度差の2要素は組み合わせることによりグラデーションサインの誘導効果が増幅することが分かった。無彩色を含む際の誘導効果について両端の色を比較し、黒<灰<赤み<青み<黄み<緑み<白の順に色彩による誘導性があることが明らかになった。
以上のことより、彩度差と明度差の要素が重複することで誘導効果が強くなるという結果から、高明度かつ低彩度の有彩色と黒色のグラデーションが人を効果的に特定方向(有彩色方向)へ誘導することが可能である。
【謝辞】調査に協力いただいた建築・インテリア学科の学生に深謝する。