作品解説
新型コロナウイルスをきっかけに家での過ごし方の需要が高まりました。
ゲームもその1つであり、需要に応じ近年高クオリティのゲームタイトルがリリースされるようになりました。本研究は2022年にフロム・ソフトウェアからリリースされ、その年のGOTY(Game Of The Year)を複数のゲームアワードで受賞した「ELDENRING」と研究対象とする。ゲーム空間を建築的視点で分析し空間の構成要素について探る。
本論では主に断片的比較と総括的比較の2つの比較を行なった。
本研究における断片的比較とは実際の建築とゲーム内の建築を比較することである。
まず「ELDENRING」の開発段階の画像をAIの類似画像検索にかけ、モチーフを探っていった。結果は同じフロムソフウェアからリリースされたゲームタイトルの画像が多く表示され、現実空間の建築のモチーフを見つけることはできなかった。
次に有名建築からモチーフを探した。分析するのが城であることと空間の世界観が中世風であることから西洋の有名城から調べた。結果は部分的にモチーフと捉えられる要素も見つけることができたが、断言できるほどではないため別の方法で研究を進めることにした。
最後に行った方法は内観から部分的に現実の建築の要素を探すという方法である。結果はゴシックの建築様式に酷似した要素を発見するとともにフランスやキリスト教と関連があることがわかった。
次に行なった総括的比較とは「ELDENRING」のストーリー進行描写と映像作品描写と比較することである。この比較ではまずゲーム内のフィールドマップを元にスタートとゴールを設定する。次にスタートからゴールまでのプレイ動画と比較対象のワンカット映画をタイムテーブルに変換し比較する。タイムテーブルは映画におけるカメラを中心に動画内で場面の転換が起きるたびにその場所名称、内部・外部どちらに該当するか、その時間を記録し作成した。同じ条件で作成した複数のタイムテーブルを比較し共通点と相違点を明らかにした。
共通点は内部と外部の割合から主に物語が進展する場所が判断できること。相違点は場面の転換数が「ELDENRING」が圧倒的に多いこと、映画におけるカメラの移動速度が速いこと、映画における撮影範囲が広いことが明らかになった。
結論はとして「ELDENRING」の空間は実際の建築の要素のような現実的要素と世界観に合ったファンタジー要素である非現実的要素を組み合わせて構成されていることが明らかになった。