建築・インテリア学科 インテリアデザインコース
作品仕様
作品解説
現在、知的財産が注目される中で、その重要な1つであるデザインについて、日本では適切な議論が殆どされていなかった。そこで、デザインの価値が理解されない原因を探るべく本研究を行った。結果、優先順位が低いという潜在意識、文字での伝達の発達、年齢に縛られる教育環境、デザイン思考を活用しない経営層が原因として推定でき、影響力の浸透、教育環境の整備、国民が良質なデザインに触れる機会の促進で好転すると推考した。
実際にデザインは、企業に対してどれ程の影響力を持っているのだろうか。イギリスの研究では、デザインを重視する企業の株価は10年間で市場の2倍成長したことが分かっている。このようにデザインは意義があるにもかかわらず、なぜ理解されないのだろうか。
まずインテリアデザインの歴史から文化的背景を概観すると、昭和期の社会的状況悪化により趣味の領域として強い抑圧を受けつつも、バブル期のブランド戦略を担い、拡大していた。
続いて国策として重視しているフィンランドとの違いをみると、デザインは、ロシア皇帝によるフィンランド大公国時代に愛国心を表現する手段として愛された歴史を持っていた。また、戦時中の陶磁器製造設備の拡大など経済面での貢献もあり、経営層にもデザイン思考が浸透していた。
以上から立てた仮説より以下の2つの検証をした。
1:取扱説明書について
家電の説明書の閲読率調査より、初期の閲読者は9割にのぼっていた。他国の研究では25%未満に留まったことからも、如何に日本人が取扱説明書を読んでいるかが分かった。
2:教育環境について
大学と院の入学時平均年齢を比較し、OECD加盟国と比べて4~5歳も早いことが分かった。即ち、素早く進路決定をする事から、専門性の高い職業の検討をせずに社会人になる為、デザイナーの存在を理解しにくい/デザインを意識しにくいといえる。
ここでユーザーに注目する。「デザインとは何か」年代毎の調査から、44歳までの多くは[色/形の変化]としたのに対し、それ以上の多くは[機能/効率的な設計]としていた。これには30年前のバブル景気の影響が考えられ、デザインに触れること自体が理解に繋がると推測できる。
以上のことから、原因として4つ挙げられる。
- デザイン=優先順位が低いという潜在意識
- 説明書を読む国民性からくる文字での伝達の発達
- 年齢に縛られる教育環境
- デザイン思考を活用しない経営層
従って、デザインの価値理解を深める為には、影響力を浸透させ、デザイン思考を普及させること、教育環境の整備、そして国民がデザインと触れる機会を増やすことが必要といえる。加えてデザインは、豊かな精神を育むという代え難い価値を持っているのではないだろうか。
主な参考文献
経済産業省/特許庁/日本インテリアデザイン史/フィンランド・デザインの原点 くらしによりそう芸術/グッドデザイン賞HP/Interacting with Computers/@niftyニュース 何でも調査団/Hppybanana.info/財務省/TEN TYPES OF INNOVATION