作品解説
日本の看板と言えば夜の街を明るく照らす光を使用した看板が多いが、どれも同じようなデザインで特別感が無い。一方ヨーロッパの看板は日本より意匠的かつ唯一無二でわかりやすい物が多いが、おもにどのようなデザインが使用されているとそう感じるのか、また、日本で生かせるデザインの工夫はあるか疑問に思い研究対象とした。結果として、ヨーロッパの看板に共通する特徴と、日本人に好まれるデザインの特徴が存在すると明らかになった。
本研究は、ヨーロッパの看板の特徴や傾向を明らかにすること、日本にヨーロッパの看板を広めることを目的とする。
まず、ヨーロッパの看板に共通する特徴を明らかにすべく、ヨーロッパ諸国に存在する袖看板236個を13項目で分析し、デザインの調査を行った。結果として、ヨーロッパの看板に共通する特徴は、装飾に渦巻き柄を使用することや、文字以外にモチーフを使用することなどが挙げられると明らかになった。モチーフが使用されている看板は90%以上だが「店の種類を判断できる」モチーフであるものは44%と約半数にとどまったことから、最低限文字を使用することが大切とわかった。さらに、景観保全のため条例で光の使用を禁止している地域が多く、日本にあるような電飾看板の数が少ないことがわかった。光の代わりに凝った装飾を施すなどして、建物と調和させつつ人々の目を惹きつけていると考えられる。歴史的価値のある建物や文化と共に生活するための苦悩が垣間見える結果となった。
次に、日本人に好まれるデザインを調査するためアンケート調査を行い、売っているものやサービス内容がダイレクトに伝わるモチーフを使用することが重要であるとわかった。
以上の結果をふまえて日本にヨーロッパ風の看板を設置することを提案する。チェーン店であれば、店舗ごとに地域性を感じるデザインにすることで唯一無二の看板を生み出し、看板めがけて観光客が訪れ地域活性化につながることを期待する。
結論として、ヨーロッパの看板に共通する特徴と日本人に好まれるデザインの特徴が存在し、看板は建物と同じように歴史的・地理的な影響を強く受け唯一無二のデザインを文化とともに育み続けていることが明らかになった。日本人にとってヨーロッパの意匠をこらした看板は珍しいものであるが、今後は本研究の提案にあるような看板が日本各地に設置され、デザインを意識した生活になることを期待する。